A8000

音楽を聴いて得られる高揚感を、
トランスペアレントな音で実現するfinalのフラッグシップモデル。
A8000の開発は、物理測定法と主観評価方法を再構築するところから始めました。D8000の開発時に確立した主観評価法によって、Eシリーズは多くの方に高く評価される音質を得てベストセラーとなっています。A8000では、その主観評価法に新たな評価指標を取り入れました。イヤホン・ヘッドホンの音質を決める要素は周波数特性が支配的ではありますが、それでは不可能な音の変化があります。それは、クラシック音楽の録音で最も重視されてきたトランスペアレントな音と呼ばれる、距離が離れたところに定位した音が明瞭であるという音の印象です。私達はこの音印象の実現が音楽を聴く高揚感を得る上で極めて重要だと考えてきました。弊社のヘッドホンD8000の高い評価は、このトランスペアレントな音を実現できたところにあると考えています。今までイヤホンでは、チューニングと呼ばれる周波数特性の変化によって音を変化させてきましたが、時間応答は大きく変化しないため、チューニングによってトランスペアレントな音を実現するのは困難です。
今回、イヤホンでトランスペアレントな音の実現を目指し、final独自の評価法「PTM」(Perceptual Transparency Measurement)を開発しました。従来の周波数特性だけではわからなかったインパルス応答の解析結果と主観評価の主成分分析との相関性について評価・改善を行った結果、A8000には、極めて軽量で音速が速い理想の振動板材料とも言われる
極薄ベリリウム箔(トゥルーベリリウム)を成形した振動板を採用することになりました。
特長
トゥルーベリリウム振動板の採用
A8000には極めて軽量で音速が早い理想の振動板材料とも言われる極薄ベリリウム箔(トゥルーベリリウム)を成形した
振動板を採用しました。ベリリウムの比重は1.85と軽量でかつ伝播速度が12,900m/sとダイヤモンドに次いで速いという
振動版として理想的な特長を持っています。トゥルーベリリウムの採用は、時間応答の改善につながりトランスペアレントな音に大きく変貌します。音の立ち上がりの鋭さや、消えてゆく音の余韻が明確に感じられ、音と音との間の静けさをも
感じられるようになります。ベリリウムの薄箔は加工が難しく、製品として安定させるまでにエンジニアは苦労を重ねましたが、その価値がある素材といえます。こうした優れた素材によってトランスペアレントな音を実現するためには、
ドライバーユニットの他の部品や、設計・製造技術についても、素材と同等の高い品質が求められます。私達はダイナ
ミック型ドライバーユニットを自社で開発・製造してきた経験を生かし、トゥルーベリリウムの利点を引き出すことに
成功しました。
※従来ベリリウム振動版とされてきたものは、蒸着という手法で樹脂フィルムにベリリウムを極めて薄く表面にコートするものでした。そうした手法は改善手法として有効ですが、フィルムの特性が支配的となり、振動板の材質をトゥルーベリリウムとした際の音や特性とは全く異なります。
幅広いジャンルの音楽で得られる高揚感と普遍性ある良い音の両立
「音楽の音場感やダイナミックレンジと、イヤホン・ヘッドホンの物理特性との関係」に着目し、音作りを行ないました。私たちは録音における音楽の音作りについて、2つの軸を設定することで整理してみました。
ひとつは、音の距離感に関わる考え方です。クラシックやジャズなどでは、距離感や響き感など、「音場感」を重視した録音が行なわれていると考えられます。一方、ロックやPOPS、また昨今のアニソンに多く見られる録音では、距離感はさほど
重視されず、それぞれの楽器やボーカルが前に出てくる「解像感」がより重視されていると考えられます。
もうひとつは、「ダイナミックレンジ」です。つまり音量の時間的な変化幅です。ダイナミックレンジが大きければ、当然
音量の時間的変化を利用したダイナミックな音楽表現が可能となりますが、一方で、ダイナミックレンジの変化よりも、
常にすべての楽器やボーカルが眼前に迫るように、ダイナミックレンジの幅を小さくした録音が好まれる音楽もあります。
これらの考え方の違いは、どれが優れているというわけではなく、音楽の成り立ちや音楽に求められているものによる違いです。クラシック、特にオーケストラでは、楽器の奥行き方向の前後関係は特に重要で、一番前に弦楽器があり、その後ろに、管楽器、打楽器と配置された各楽器群の距離感や音量のバランスが崩れると音楽が破綻してしまいます。
そのため、すべての楽器に対して眼の前に迫るような均一な解像感は求められません。ただし、クラシックでも例えば弦楽四重奏などでは、ダイナミックレンジは狭くなり、各楽器の解像度がより際立ってきます。一方、ロックやPOPSは、音場感はクラシックほど必要とされず、音場感よりも解像感が重視されます。

これらの前提条件が、特にイヤホン・ヘッドホンのリスニングにおいては非常に重要で、それぞれに適したターゲット
カーブやドライバー設計にすれば、より深く、音楽を楽しめるようになることがわかってきました。
この音楽における音場感と解像感を横軸とし、ダイナミックレンジを縦軸にした下記のグラフをご参照ください。
A8000はさらに時間応答性に優れていることから、Dシリーズに迫る広さでダイナミックレンジの幅の狭いPOPSやロックでの解像感からダイナミックレンジの広いクラシックやジャズでの音場感まで幅広い音楽で高揚感を得られる音質となっています。強い個性によって少数の熱狂的なファンを生むという手法で作られた音ではなく、より高い普遍性を目指した音に
よって実現しているところが、A8000の最も大きな特長と言えます。
カスタマイズしたかのような装着感
A8000では、Bseriesの開発で確立したIEMの最適解である筐体設計をベースに、より優れた装着感を実現しています。イヤホンの装着感が優れているか否かは、圧迫感で決まります。人間工学を謳い有機的な形状を選択するなど、シリコンの反発力で保持する方法は一見正しく見えますが、常に耳に力がかかることとなり、気付かない内に耳へ負担を掛け、疲労が蓄積します。有機的で大きな面で耳に接する形状に比べ、接触面積を限定する形状により、圧迫感の無い装着感を目指しました。そのため、多くの方の耳に適合します。接する点全てに圧迫感が無ければ、これほどイヤホンの装着は快適なのかと感じて頂ける、まるでカスタマイズイヤホンであるかのような優れた装着感となっています。
「テトラチャンバー構造」を持つステンレス切削筐体
ダイナミック型ドライバーユニットは振動板の前室や後室の容積や形状が音質に大きな影響を与えます。特に新開発の
トゥルーベリリウムドライバーの動きは非常に繊細で、筐体内部の空間の影響を大きく受けることになります。筐体内部の設計は、ある程度まではシミュレーターによって計算できますが、その後は狙った音質になるまで実際に試作を繰り返す
しかありません。A8000の筐体内は、ドライバーの動きを最適化するために、ドライバー前室と二重構造となっているドライバー後室、MMCXコネクター部分の別筐体の四つに分かれる「テトラチャンバー構造」となっています。前室にはドライバーが筐体にダイレクトにマウントされており、不要な振動が抑えられ音の輪郭が明瞭になる設計となっています。また各々4つのチャンバーにより、量感とタイトさと両立した低域を実現するとともに、音漏れを防ぐ効果も持たせています。
MMCXコネクター+シルバーコートケーブル
MMCXコネクターは高精度な自社開発品です。音場に広がりを与える高純度OFCシルバーコートケーブルは、信号の伝送速度を追求したスーパーコンピューター「京(kei)」用のケーブル開発、製造していることでも名高い潤工社との共同開発品です。絶縁被膜には潤工社がジュンフロンブランドで多大のノウハウを持ち、最も誘電率の低い素材である素材PFAフッ素ポリマーを使用。外被には、柔軟性を高めるためにPVCを採用。驚きの柔軟性を実現し、極めて使いやすくタッチノイズも起こしにくいものになっています。また、断線を起こしやすいMMCXプラグ部分や3.5mmミニプラグ部分については、通常5千回程度の屈曲試験で合格とするところを、5万回以上の屈曲試験に耐える仕様としています。
MMCXが簡単にはずせるMMCX ASSIST
MMCXコネクターを使用しているイヤホンのケーブルの着脱をスムーズにするためのアイテムです。MMCX ASSISTを使用すると、MMCXコネクターに対してケーブルが抜ける方向に正しく力が加わり、驚くほど簡単に取り外すことが可能です。また、ケーブル側のMMCXコネクター部引っ張る際に、誤ってケーブル部分を引っ張ってしまい、ケーブルを断線させて
しまうという恐れも防ぐことができます。
ケーブルタッチノイズを解消するイヤーフック(ロック機構付き)
イヤーフックはタッチノイズの減少に有用で、装着頂くと歩行時にケーブルと身体が触れることで発生する不快なごそごそ音(ケーブルタッチノイズ)が劇的に減少します。弊社の従来のイヤーフックは、一般的なイヤーフックよりもスリムで、ワイヤーや樹脂の入ったケーブルに比べて異物感がなく、掛けていることを忘れる快適さを特長としています。今回、新たにケーブルのロック機構を追加いたしました。
左右軸色違いのオリジナルイヤーピース
音導管部分と耳に触れる部分とで硬度が異なる2種類のシリコン素材を採用。音導管部分には、耳に触れる部分に比べて
硬度が高いシリコンに溝加工を施すことで強度と柔軟性を両立。耳に触れる部分には硬度の低いシリコンを採用し、快適な着け心地と高い遮音性を実現しました。軸色を一方はグレー 、もう一方を赤にすることにより、イヤーピースを少し
めくってイヤーピースの軸色を確認することで、 薄暗い場所でも左右の見分けがつきやすくなっています。さらに、隣の
サイズの軸色が異なる(グレー軸は濃いグレーと薄いグレーの交互、赤軸は赤とピンクの交互)ため、サイズの判別もしやすくなっています。サイズはSS / S / M / L / LL の5サイズです。
交換可能なダストフィルター
ダストフィルター部分は耳垢等によって開口部分が汚れる場合があります。A8000では、ダストフィルターをお客様自身で
交換可能な形状としており、製品にダストフィルターを付属させています。
アルミ製キャリーケース
アルミ製キャリーケースは、ポケットへの収まりとA8000本体の保護の両立を考えて設計致しました。力の加わる部分には切削したアルミニウムを使用。内部はシリコン製のドームでソフトに押さえ、傷を防ぎます。左右の筐体が接触して傷つくことを防ぐための仕切り板など、細やかな工夫を施しています。
スペック
型番
FI-A8DSSD
筐体
ステンレス
ドライバー
ダイナミック型(Truly Beryllium diaphragm)
コネクター
MMCX
ケーブル
OFCシルバーコートケーブル
感度
102dB
インピーダンス
16Ω
質量
41g
コード長
1.2m
付属品
アルミ製キャリーケース、MMCX ASSIST、イヤーピース(Eタイプ5サイズ)、イヤーフック、交換用ダストフィルター
装着方法
本製品は耳掛けタイプのイヤホンです。ケーブルを耳に掛けることで、タッチノイズが耳に伝わることを防ぐことができ、快適に装着することができます。

STEP1 本体内側にあるRとLのマークを確認します。Rが右でLが左です。
STEP2 ケーブルを耳の後ろから前に向かって掛け、イヤホンのイヤーピース部を耳に挿入します。
STEP3 耳甲介(耳のくぼみ部分)にイヤホンがフィットしにくいときは、
耳たぶを後方やや上方に引っ張りながらイヤホンを収めます。

※ケーブルが耳の後ろにフィットしない場合は、付属のイヤーフックをご使用下さい。
※耳穴への収まりが緩く感じる場合は適宜イヤーピースのサイズを変更して下さい。
左右でサイズが異なる場合もございます。
エージング
エージングとは、ある時間使用を続けることで、音に変化が起こる現象のことです。イヤホンの内部には、小さなスピー
カーと言えるドライバーユニットが入っており、極めて薄いフィルム製の振動板がコイルと接着剤で貼付られています。
コイルにオーディオ信号が流れることでコイルが動くのと共に、その振動板がミクロン単位で動くことで音を発してい
ます。その際、断定は出来ませんが、接着部分が振動板の微少な動きに影響を与えている可能性があると、私達は考えています。一定時間使用することにより、振動板が動きやすくなることで設計意図本来の音質に近づくようです。本製品については、小口径であるため、エージングの変化がわかり難くなるまでに長めの時間が必要です。概ね150~200時間程度、通常の使い方を続けていただけましたら、繊細さが増したと感じられる筈です。大音量でのエージングやノイズによるエージングよりも、普段お聴きになる音楽と音量でエージングを進めた方がより好ましい結果が得られます。正確な比喩ではありませんが、靴を馴らすために無理な動きをすると、普段歩くのとは異なる皺ができる筈です。振動板も同様に無理な動きをさせるよりも、ご使用になられる環境で馴らした方が自然、と考えていただけると良いでしょう。

エージングには、音響心理的な面もあります。新たなイヤホンを購入した直後に試聴した感想は、必ずしも絶対的なものではありません。実は日常的に使用しているイヤホンとの相対的な比較をしてしまっているのです。新たなイヤホンを購入し、ある一定時間使い続けると、そのイヤホンが基準となります。その基準となるまで使い続けた上で音質評価をおこなう方が、長期的に飽きない製品を選択をしやすくなります。